現場で会おうZ!!!!!

たまいびびが「現場」に辿り着くまでの長くて短いおはなし。 週末更新おたのしみに!

第1話 「たまいびび」

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「先生、これで通算55回目の死です。松井秀喜氏の背番号に並びました」

 

「ええ、そうですか。入院されますか?」

 

「はい。特に構いませんが条件があります。私を担当する看護師は院内で3番目、いや、4番目に美しいと評判の方を。スカートの丈は膝上25㎝。白衣以外は受け付けません。きっちりと、滞りなくここは守って頂きます。室内にはWi-Fi完備。食事にはトマトとあの青汁をゼリーにしたような毒物を出さないこと。もちろん部屋は個室で、先ほど申しましたかの4番目の看護師の方と、入院中にワンチャンスあるシチュエーションを2度ほど提供していただきたいと存じます」

 

「うむ。そうですね、検査はさせて頂きますが、基本的には自宅療養という方向で。リハビリも毎日行って下さい。あなたが入院することで、院内に危機が訪れることを危惧してのことではありませんのでご安心を」

 

 

 これはとある男性の患者と医師との普段のやりとりである。

 ここで「死」を主張したある若い男は、実際に55回もの死を経て輪廻転生してきたわけではなく、あくまでもこれは比喩的な表現であり、彼はある事象をもってしてこれを「死」と表現する。

 

 遡ること5年前。

 彼は大学を卒業し、医療に従事していた。

 人間として、何者かに成り、他者の人生に関与することの難しさを感じながらも、そのやりがいと職業としての在り方に、彼は満足の日々を送っていたのである。

 

 ある日、患者を見送ったあと、右手中指に感じたことのないしびれをきたし、それは示指、環指と波及していき、右腕を完全に支配した。

 それと同時にビクンと手首が跳ね上がり、ブルブルと振動を続け、それは一向に止まる気配はない。

 彼はそれを左手で押さえつけ、同僚たちに何事かと心配されても、「なに、少量の疲れのあらわれだよ」と誤魔化し通した。

 一時はそれでおさまったのであるが、その日の深夜、日中に感じたしびれを再度確認し、此度はそれが左腕にまで波及したのである。

 彼は携帯電話を震える手で持ち、近所に住む友人に電話を入れ、助けを求めた。

 

 その後もしびれは続き、ともすれば発作のように痙攣するほどまでとなった彼の身体。

 駆けつけた医師は、緊急で強力な注射を彼に打ち、ことなきを得た。

 しかし、彼の身体はもう元のように自由に動かすことはできなかったのである。

 

 とても一人では暮らせまいという医師の判断で、彼は旧暦の10月に神々が男女の縁組を決めるといわれている国、つまり郷里へと強制帰国。

 

 それからというもの、未だまともな原因がわからず、彼は県内一の大学病院に移され、現在も治療を続けている。

「原因がわからないものだから」という理由なのかは果たして定かではないが、彼は精神疾患であると診断された。

 しかし、あきらかな身体的障害が残存しているという結果から、医師も、彼自身もこの診断に現在も納得がいかず、探り探りの治療を続けているのである。

 治療をし始めて、もうかれこれ5年が経つ。

 

 

 そして彼が「死」と表現している事象とは、この原因不明な痙攣発作のことであり、1度発作が起こると、筋肉の急激な収縮のあとに起こる脱力および筋肉の弛緩状態は約3日間続き、記憶がこぞってすっ飛ぶ。

 よって彼はこの現象を「死」と呼び、忌み嫌い、「死」を避けるように暮らす。

 

 

 そんな「死」と闘う彼には、この上なく愛している事柄がある。

 彼は「映画」という娯楽を好み、これまで観てきた作品は数知れず。

 アクション、恋愛、ヒューマンドラマ、コメディ、ホラー、近年は海外ドラマも溺愛し、ジャンルを問わず映像作品を愛してやまない。

 しかしながら、彼がどうしても認められないジャンルがあった。

 

「アイドル映画」

 

 彼自身、容姿にコンプレックスがあったわけではないが、容姿を売りにして実力の伴わない生臭い芝居を見せつけられるのは勘弁の極み。

 仮に芝居をしていなかったとしても、ドキュメンタリーとして「私たち、こんなに頑張っているのよ」と笑顔ではなく涙さえながしてしまう幸福感も多幸感も何も感じられない安っぽい映像に、彼は幾たびも肩を落とした。(アイドルにはなるたけ微笑んでいてほしいものだ、と彼は思うのである)

 

 しかしながら、ある日ふと手に取った「アイドル映画」には彼の心は動揺を隠せなかった。

 

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 それは、演劇を主体とした学園モノで、高校生のリアルな日常と個性的なキャラクターが魅力の所謂「アイドル映画」。

 その映画で主演を張っていたのは、かのアイドル「ももいろクローバーZ」。

 ここでは「MCZ」と称すこととしよう。

「アイドル」という概念を破壊するかのような正直絶妙なビジュアル、個性的すぎるキャラクター、「意外」としかいいようのない、息を飲むほどの素晴らしい演技力。

 彼はアイドル「MCZ」に大変感銘を受けたのである。

 これは、「まさか」、「これさ」、「あのさぁ」の出来事であった。

 

 そんな彼が興味を持った「MCZ」を愛する人々、ここでは「MNNF(モノノフ)」とでも申すべきか。

 その「MNNF」は彼に大変興味を持った。

 何の定めか運命か。

 彼は一瞬にして「MNNF」に取り囲まれ、彼自身も「MCZ」について探求するようになった。

 そして彼を何故だか見捨てはしない「MNNF」についても、彼は興味を抱くようになる。

 

 病により気力、精神力共に疲弊していた彼であったが、「MCZ」への探求を少しずつ進めることによって、病状は次第に安定していく。

 しかしながら、一瞬の油断・無理な行いをすれば、彼の言う「死」が待ち構えているのは明らかな事実。

 彼は「死」を極力抑えることに尽力しながら、「MCZ」への探求と「MNNF」との交流を深めていくことを目標に、とにもかくにも「生きていくこと」を決意したのである。

 

「MCZ」および「MNNF」との出会いから1年。

 彼は主に「MCZ」の黄色い女子(玉井詩織)を応援することに決めた。

 そして彼のもとには、新車の黄色のハスラー(彼がいうには「ぶらり」と名付けられたらしい)、愛猫のがるる(首輪は緑から黄色に変更されたそうだ)が集い、一喜一憂しながらも、リハビリを続け、かくして生活を続けている。

 

 

 彼は非常に破廉恥で、慇懃無礼で、朽木糞牆であるが、「MCZ」および「MNNF」との交流によって、人生観を大きく変えられたのだ。

 

 

 ある「MNNF」が彼にこう教えたことがある。

 

 

「MCZのライブのことを私たちは『現場』と呼んでいるんです」

 

 

 彼の外出時での体力は保って2時間程度。

 これ以上の外出は禁忌とされている。

 しかしながら、これはあくまでも現在の状態であり、回復の兆しは十分にある。

 

 彼は非常に破廉恥で慇懃無礼で、朽木糞牆であると同時に、堅忍不抜で用意周到、そして不撓不屈な男。

 

 彼は心に決めたのである。

 

 

 Road to Genba

 

 

 現場へ向かうために

 

 正体不明の病と

 

 闘っていくことを

 

 

 

 

 合言葉は

 

『現場で会おうZ!!!!!』

 

 

 

 

 2017年8月初旬

 

 彼は、ある重大な検査を迎えていた。

 

 その検査の最中に彼が言う「死」は起こった。

 

 彼は知らぬ間にその瞳から涙を流し、震え上がる全身は彼自身を戦慄させた。

 

 そして、長い悪夢を見て、心臓の鼓動を確かめ、「生」を噛みしめ、また涙を流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや

 

 

 

 

 

 

 

 それでも

 

 

 

 

 

 まだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は再び

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 社会に耐えうる身体と

 

 多くの人々を受け入れる心を

 

 取り戻すために

 

 

 project vivi (#pjvivi)

 

 

 

 以下、これから書き記していく

 

 彼の現場へ対する

 

 活動、

 

 思考、

 

 努力、

 

 猥談、

 

 挫折、

 

 希望、

 

 オクチ、

 

 クチュクチュ、

 

 モ◯ダミン……

 

 その他あらゆる事柄を

 

    #pjvivi

 

    と呼ぶことにする。

 

 

 

 

 彼は 

 今日も

 現場に向かって

 鍛錬に

 励んでいることであろう。

 

 

 そして「MCZ」は彼に歌い問いただす。

 

 

 単純な答えさ

 もうわかってるんだろ? 

 ライバルは自分だと 

 

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 彼の名は

 

 たまいびび

 

 

 彼は非常に破廉恥で慇懃無礼で、朽木糞牆であると同時に、堅忍不抜で用意周到、そして不撓不屈な男。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これから紡ぐ物語は

 

 彼、

 

 否、

 

 たまいびび

 

 縁結びの国から

 

 「MCZ」の現場へ飛び出すまでの

 

 狭窄かつ広大な世界を描いた

 

 長編ドラマである……